モノが売れない時代だからこそますます重要になるビジネスの鉄則

私が就職したのは某精密機器メーカーでしたが、最初に配属されたのは都内にある某カメラ量販店でした。当時の量販店のカメラ売り場には、ヘルパーと呼ばれる取引先メーカーから派遣された人間が販売員として立っていました。

私は研修という名目で約1年6ヶ月の間、量販店に派遣されていました。社会人生活を想定外の場でスタートすることになった私は、メーカーに入ったはずなのになぜ俺はここに立っているのだろうと納得のいかない気持ちもありました。
しかし、ビジネスパーソンとしての基本、人間関係、営業のスキルなど、私の人生の中でも本当に貴重な経験と学びを得られ、今では心から感謝しています。

ここで多くを学ばせて頂きましたが、その中でも私が特に大きな収穫だったと思える経験をご紹介します。
それは販売、営業の技術です。

私はメーカーから派遣されたヘルパーではありましたが、量販店の一員として店頭に立っていますので、自社の商品だけ売れば良いというわけではありません。お取引先であるお店のお役に立つということが大前提ですから、様々なメーカーの商品を売りながら自社の商品も売らなくてはなりません。自社の商品を売りたければ他社の商品も売らなくてはならないという、なかなか厳しい環境なのです。

私は1年半の間、自社他社合わせて約1万台のカメラを売りました。多くの販売員の中でも優秀な方だったと思います。
基本的には一人一人のお客様に接客して一台一台売った数ですから、我ながらよく売ったと思います。

そんな私でしたが、最初から売れる販売員だったわけではありません。あるコツを掴んでから、時間をかけずにすんなりと買っていただけるようになり、また売り逃しをしないようになり、販売数が増えたのです。

そのコツとは「商品説明をしない」「売ろうとしない」「雑談をする」ということでした。

派遣される前にメーカーで販売研修を受けました。優秀な先輩たちから多くのことを教えていただきましたので、はじめからある程度の成績は出せるのですが、ある壁のようなものがあって、そこからなかなか伸ばせずにいました。

そんな時に「あれ?今のは随分と楽に売れたなあ。」というのが何回かありました。振り返ってみると、それはお客様と雑談に近い話をした時でした。例えばお客様が海外旅行のパンフレットを持っておられたのでどこに行かれるのか聞いた時とか、ご夫婦で来られて奥様のお腹が大きかったので赤ちゃんの話をした時とかです。

考えてみれば、基本的にカメラを買いに来られるお客様は、何か楽しいことが先にある方がほとんどです。
ワクワクしているお客様にそのワクワクする未来のお話をお聞かせいただく、そしてそのワクワクの未来に役立つカメラを専門家としておすすめして差し上げる。そうすればお客様は安心して買ってくださる。この事に気づいたことで私の販売数は増え始めたのです。

それからは私のお客様へのお声がけも「カメラをお探しですか?」から「ご旅行に行かれるんですか?」とか「お子さんを撮られるんですか?」などに変わりました。外れている場合はお客様の方から「いや、○○なんだよ」とか教えて下さいますので、スムーズにお客様との会話がスタートすることができるようになりました。

量販店の販売員とお客様とのおつきあいは、多くはその場限りです。
しかし短い時間でも、自分のことに興味を持ってくれて、自分を理解した上で自分に最適な商品をすすめてくれる、そんな販売員であればお客様は信頼し、安心して買ってくださるのですね。

まさに一流の営業マンが鉄則にしている「商品を売る前に自分を売れ!」を私は実践を通して学びました。
モノが売れない、商品の差別化が難しい時代になりましたが、この鉄則はますます重要になってきていると感じます。

投稿者プロフィール

株式会社きれい 代表取締役 柴田幸治
大手光学機器メーカー勤務後、経営コンサルタントとして2000年に独立起業。
旺盛な好奇心とちょっと変わったアイデア、幅広い人脈で、販売数100万個を超えるヒット商品や、海外のコンテストで世界一を獲得した商品などをプロデュース。
4つのきれい(くらし・かんきょう・からだ・こころ)を基にした独自のメソッドで、企業のCSR・商品開発・マーケティングを支援しています。