日本美術のつながりとモノづくりの大切なプロセス

上野の東京国立博物館で特別展「名作誕生-つながる日本美術」を観てきました。

日本の美術史上の名作を作品同士の影響関係に注目して展示しています。
鑑真ゆかりの木彫や美麗な普賢菩薩、雪舟、伊藤若冲らの代表的な作品、古典文学から生まれた工芸品、そして岸田劉生といった近代絵画まで、地域や時代を超えた名作の数々の「つながり」をテーマにした展示は、なかなか興味深く面白かったです。

私はすばらしい名作を残した雪舟、俵屋宗達、伊藤若冲、狩野探幽といった巨匠たちは「天才」だと思っていました。
しかし今回の特別展を観て、その認識が少し変わったように思います。

彼らは生まれ持った才能を活かした「天才」だったかもしれませんが、同時に「努力家」でもありました。
というのは、今回の展示でもわかるのですが、彼らは主に中国の先人たちの名作を若い頃からたくさん模写しています。

例えば水墨画の雪舟は中国の夏珪や玉㵎などの作品を、奇想の画家伊藤若冲は文正や珍伯仲などの作品を模写しています。
先人たちの素晴らしい作品を模写することで、直接本人から学ぶことはできないその技法を、自分のものにしようと努力したのだと思います。

そして彼らは、先人巨匠たちに近づきつつ、さらにその卓越した先人の作品に自分なりの工夫や技法を加えて、またはそこから新しい技法や作風を創り出し、オリジナリティーのある独自の世界を作っていきました。

「天才」的な芸術家というと初めから自分だけの世界を創造できる人のように思われますが、そういう意味では雪舟や若冲はそうではなく、努力を積み重ねた上に開花した天才だといえそうです。

先人たちが残した名作を模倣し、継承し、そして新しいものを創造する。名作と呼ばれるものにはそんなプロセスがあるのだと、今回の特別展では気が付きました。

ものづくりにおいて、新しい価値を創造することはとても大切ですが、ゼロから生み出すのはなかなか大変でもあります。
古臭いという概念をいったん取り去って、過去の卓越した名作に目を向け、そこにある先人の智恵や技術を元に、先人の偉大な力を借りながら現代のライフスタイルに合った新しいものを自ら創造する、これも有効な方法ではないかと思います。

東京国立博物館

投稿者プロフィール

株式会社きれい 代表取締役 柴田幸治
大手光学機器メーカー勤務後、経営コンサルタントとして2000年に独立起業。
旺盛な好奇心とちょっと変わったアイデア、幅広い人脈で、販売数100万個を超えるヒット商品や、海外のコンテストで世界一を獲得した商品などをプロデュース。
4つのきれい(くらし・かんきょう・からだ・こころ)を基にした独自のメソッドで、企業のCSR・商品開発・マーケティングを支援しています。