季節に合わせた持続可能なものづくり

1年に1度、3ヶ月間だけ注文を受け付ける漆器屋さんがおります。漆とロック株式会社(貝沼航社長)さんです。

十月十日(とつきとおか)と名付けられたこのユニークなシステムで提供される「めぐる」という漆器の注文受付は12月半ば〜3月半ばだけ、数量は300組限定です。注文品が手元に届くまで春から秋まで何ヶ月も待たなくてはなりませんが、その間にメールや葉書でめぐるが作られる様子が伝えられます。

十月十日に込められた貝沼さんの思いはいろいろあるのですが、私は自然と調和したものづくりへのチャレンジという意味で注目しています。

ちょっと長くなりますが、「めぐる」のサイトの一文を引用します。

製作工程と季節
産地の年配の職人さんと話をしていると、よく「昔は1年かけて作るリズムが決まっていたんだよなァ」という話を聞くことがあります。
春に木地を挽き、夏から秋まで漆塗りや蒔絵をして、冬に店頭に並んで、お正月の使用に合わせると。実は、この1年間の製作サイクルは自然のリズムや日本の気候に合ったものでもあります。 漆器の素地となる日本の広葉樹は、木の活動が止まっている冬の時期に山から切り出され、1年ほど寝かされて水分を抜いていきながら、まず荒型という大まかなかたちに削られます。その状態で乾いた春の季節を過ごした後で器のかたちに整形して「木地」が出来上がります。その後、塗師によって漆が塗られますが、漆は湿度と温度の影響を受けながら乾く塗料のため、よく乾く夏の時期に下地を施して、気候が安定した秋の時期に繊細な上塗りを行うことで、丈夫で美しい仕上がりとなっていきます 。

そういった自然素材に適した季節のサイクルで作っていくことを取り戻していきたい、そのための仕組みが「十月十日(とつきとおか)」です。

「めぐる」のサイトより

3月半ばで注文を締め切った後、製作は春分の日(3月20日)からスタートし10月まで続きます。なぜ春分の日から始まって10月に完成なのか?そこには昔から長く続いてきたこうした自然のリズムに合わせたものづくりがあります。

自然と調和したライフスタイルへの転換が求められている今、十月十日の仕組みや考え方は、まさに自然と調和したのもづくりへのチャレンジだと思います。

貝沼さんはサイトの中で

現在の課題を解く鍵になるのは、「適量生産・適速生産」という考え方ではないかと思うようになりました。

「適量生産」とは、手工芸的な少量生産でも、工業的な大量生産でもない、「持続可能な中量生産」のことです。

とおっしゃっています。

木や漆といった自然素材は大量生産には不向きです。しかし自然素材は、石油などの地下資源と違ってしっかりとした管理の元では、いつまでも使い続けることができる可能性をもった再生可能な資源です。

大量生産から持続可能な中量生産へ

有限な資源から再生可能な資源へ

使い捨てから長く使うライススタイルへ。

貝沼さんの十月十日はSDGs12番めのゴール「つくる責任つかう責任」の達成に向けたチャレンジとして大注目です。

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