日本の伝統文化が直面している危機と文化を守る意味とは

9000年も前の縄文時代から現代に至るまで、漆は日本人の生活、文化を支えてきました。

東大寺などの仏像も、宇治平等院鳳凰堂、中尊寺金色堂、日光東照宮のような建築も、蒔絵や螺鈿といった技法を駆使した芸術品も、漆無くしては作れませんでした。

そして世界を魅了している和食も、漆を使って作られるお膳やお椀、お箸など漆器がなくては成り立ちません。
CHINAが磁器を意味するように、JAPANは漆器を意味するほど、漆器は日本を代表する伝統工芸品であり、日本の文化そのものです。

日本だから生産できた高い品質の漆、そして日本人ゆえの卓越した技法と職人の技。他の国では決して作り出すことのできないものだからこそ、漆器は古くから海外でも珍重され憧れの対象でした。

しかし今、この誇るべき漆文化が厳しい状況になっています。

ライフスタイルの変化により漆器の需要が減り、漆器産業が縮小しています。これはこれで厳しい状況の一つですが、伝統的工芸品と言われるもの全般に言えることです。

漆器についてはもう一つ大きな問題があるのです。

それは原料となる漆のほとんどが中国からの輸入に頼っていることです。
現在、漆は国内需要の98%が中国産です。国産はわずかに2%です。

JAPANとも呼ばれた日本を代表する伝統工芸品である漆器が、実は中国からの輸入に頼らなければ成り立たないという状況なのです。

仮に中国から漆の供給がストップしてしまったら、漆そのものが手に入らなくなります。国産でまかなおうとしても、漆は一朝一夕に増産することなどできません。樹液を採集できるまで漆の木が成長するには10年の歳月が必要なのです。

そして漆を採集するには漆掻き職人の技が必要です。
漆は漆の木に傷を付けて、そこから染み出す樹液を一滴一滴掻くという作業が必要です。この日本独自の漆の採集方法が高い品質を実現しています。
そんな地味な作業を繰り返して採集できる量は1本から約200g程度。漆の木があったとしても、職人がいなければ漆は手に入らず、またその量もわずかなのです。

かつて中国から漆の供給がストップしたことがありました。
1958年長崎で起きた国旗をめぐっての騒動から、中国は日本との貿易を中止。漆も入ってこなくなったのです。貿易が再開されるまで東南アジアから輸入するなど対策は講じられましたが、漆産業は大きな影響を受け、結果的に合成樹脂を使った漆器が大量に生産されることにつながりました。

時代の状況は違いますが、同じようなことが起きないとは言えません。
中国に限らず、日本が世界に誇る伝統工芸の命運を外国が握っていることは非常に問題です。

自分たちの文化を守ることは、自分たちを守ることにつながります。
文化を失うことがどんな事態を引き起こすのか、それは国を失うに等しく、いずれその民族は滅びます。歴史が証明しています。
漆文化を失うことは、子や孫の世代が幸せに生きられるかどうかに関わる問題なのです。

今、国産漆を増やそうという動きが起きつつあります。
私もこの問題に取り組んでいきます。

投稿者プロフィール

株式会社きれい 代表取締役 柴田幸治
大手光学機器メーカー勤務後、経営コンサルタントとして2000年に独立起業。
旺盛な好奇心とちょっと変わったアイデア、幅広い人脈で、販売数100万個を超えるヒット商品や、海外のコンテストで世界一を獲得した商品などをプロデュース。
4つのきれい(くらし・かんきょう・からだ・こころ)を基にした独自のメソッドで、企業のCSR・商品開発・マーケティングを支援しています。

NPO法人ウルシネクスト理事長