漆サミットに参加しました

11月23日、24日の2日間にわたって、日本漆アカデミー主催の「漆サミット」が岩手県盛岡市で開催されました。

23日は蒔絵の人間国宝である室瀬和美氏の講演があり、私も聴講させていただきました。

室瀬氏は、厳島神社、平等院鳳凰堂、都久夫須麻神社、高台寺御霊屋、日光東照宮、中尊寺金色堂といった代表的な漆が使われている建造物を例にあげながら、文化財の修理やそこに関わる国産漆の不足、今後の取り組みなどついて解説されました。

  1. なぜ建造物の修理に国産漆が使われなくなったのかについて、氏は次の項目をあげられました。
  2. 国産漆と中国産漆に成分の違いはないので、中国産で構わないという考えがある。
  3. 国産漆は中国産漆に比べて価格が高い(現状で4〜5倍。かつては10倍以上)
  4. 国産漆は中国産よりも扱いにくいと感じて、中国産を選ぶ職人がいる。
  5. 国産漆の絶対量が少ないので、大量に使う建造物の修理にまわらなかった。

この中で、絶対量の不足については増やす取り組みをしなければ解決しないとする一方で、

  • 成分分析の結果に違いはなくとも、実際に使ってみると国産漆は中国産に比べて塗膜の硬さや耐久性に違いがあり、文化財にはやはり国産漆を使うべきだと考えている。
  • 価格については高いのは事実であるが、全体のコスト構造の中で多くを占めているのは人件費であり、漆が占める割合はそれ程大きくないので、工夫次第だと考えている。
  • 国産漆が扱いにくいという点においては、確かに国産漆は中国産に比べて湿度や温度に敏感だが、これは慣れの問題でもあり、経験と技術によって解決できる問題である。一定以上のレベルの職人にとっては問題ではなく、むしろ好都合な面もあると考えている。

というように、絶対量の不足以外についてはそれほどの問題ではないという考えを示されました。

氏はご自身の専門である美術品の修理についても触れられましたが、なかなか興味深い話でした。

文化財級の美術工芸品の多くは美術館や博物館など、温度湿度が管理された施設に保管されていますが、そうした環境にある文化財を修復する場合、環境の変化はできるだけ避けねばなりません。

漆工品において、ここで問題となるのが湿度です。

漆は一定以上の湿度がなければ乾燥・硬化しません。漆塗りの工房には漆風呂とか室と呼ばれる乾燥させるための湿度の高い保管庫があるのはそのためです。

国産の漆といっても画一的なものではなく、産地、木、掻いた職人によって様々な特徴があって、どの程度の湿度によって乾燥するかも違い、仮に湿度60%で保存されている文化財であれば、60%で乾燥する漆を使って修復しなければならないということになります。

割合からいけば低い湿度で乾燥する漆は少ないわけで、美術品においてはそうした漆を用意しなくてはならないというご苦労もあるわけです。建造物に使うということであれば量だけ増やせば良いが、美術品などのためには湿度が低くても硬化するような漆も必要だということです。

氏もおっしゃられていたのですが、同時にこのことは漆の絶対量を増やせばそれでよいわけではないということも示しています。

私たちの漆プロジェクトは、まず漆を増やすことを目指していますが、その漆がどんな特性をもつものかという点も考えていかなくてはならないと感じました。

自然の素材である漆は、なかなかに手強いです。

 

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